特別じゃないことの積み重ね
秋がない国
2025年も残すところ1ヶ月を切りましたが皆様いかがお過ごしでしょうか?
夏が長過ぎる所為か少し涼しくなって来たかと思いきや過ごしやすい秋の気候も束の間(というよりほぼ見当たらない。)あっという間に寒くなった12月の真ん中あたりに投げ出されております。もうこのまま日本にはバランスの取れた四季の移ろいというものはなくなっていってしまうのでしょうか。「四季ではなく二季」などと最近ではよく聞かれるようになりました。昔から豊かな四季の中で日本人の感性は醸成され、肌理の細やかな文化を育んできたことを思うと今後このような季節の切り替わり方になっていく影響は暮らしの多方面において出てくることと思われます。
四季と身体
これから本格的な冬へ向けて身体も変化していきます。骨盤は縮み、身体全体で言えば閉じていく感じになります。これは体熱を逃さないための身体の仕組みで、一昔であれば夏が終わり秋になっていく中で徐々に胸が閉じていったりしながら(胸が閉じることによって夏の終わりのちょっとした感傷的な気分や秋のアレルギーがあります。)本格的な冬仕様の身体にモデルチェンジしていったのですが近年の夏から冬への助走の無さに身体の方もびっくりしながら対応をしているようです。
寒暖差や気圧の変化に伴って起きる不調や症状を抱える方の増加も季節の急な切り替わりの変化にまだうまく馴染めていないことのあらわれなのかも知れません。整体の世界でも「自律神経の調整」をうたったところが増えていたり、お客様の中にも「自律神経が乱れがちで」とカウンセリングの際にこぼされる方が増えてきてる印象があります。
身体のしなやかさが鍵
増え続ける「どうも自律神経がおかしいみたいで」という悩みや相談に対して我々のような手技者ができることは至ってシンプルで「身体に柔軟性を取り戻させ、姿勢を偏りのない状態へ整えること。」です。
何故、身体に柔軟性があって姿勢が良いと自律神経症状が緩和されるのかを頭痛を例にして書きますと頭痛の悩みで来院される多くの方に共通して見られるのが、肩の巻き込みや首が前に出てしまうことによって重心線がずれてしまっており重たい頭を支えるために首肩周辺の筋肉が常に緊張を強いられているような、いわゆる姿勢不良です。またPC・スマホによる昼夜問わずの眼の酷使によって視神経に関連する後頭部周辺に強い凝りが生じている方も本当にたくさんいらっしゃいます。(以前ブログにも書きましたが眼の酷使は肝臓の疲労に出ます。)
こうした姿勢不良やそれに伴う筋肉の緊張や凝りが神経を圧迫したり血流不全を引き起こすために頭痛や眼精疲労、目眩や耳が聞こえにくいなどといった多くの頭部症状を引き起こしてしまうのです。姿勢が良いということは神経や血流の通り道がしっかり確保できている状態とも言えます。そもそも生命活動はそうした神経や血液などによって支えられているのですからそれらの交通や流れがスムーズな状態であることが健康に直結するのは想像に難くないと思います。つまり形態(=姿勢)を整えると身体の機能が整ってくるのです。
心身の柔軟性とは環境から受ける変化やストレスに対しての回復力だったりそういったダメージを受け流したり最小限にとどめる力でもあります。先に「心身の」と書きましたが身体の柔軟性が心といった精神面の状態に直結するというのは先ほどの姿勢と機能の話と同じです。それで言えばやる気やモチベーションといった一見内面の問題のように思えるものも結局は形を変えた体力であったりするわけでつくづく身体が資本だなと感じます。
整体という営み
身体が資本と書きましたが施術をしていてよく思うのがデスクワークも「肉体労働」だとということです。先ほども書きましたが重たい頭を支える筋肉や座っていると収縮したままになってしまう深層筋(インナーマッスル)を長時間座ってることで固めてしまい肩・首・腰の症状をはじめむくみや頭痛、生理痛など多岐にわたる不調の下地になっています。長時間動かないことの反動でジムなどで体を動かし始める方も多くいらっしゃいますがそもそも固まってパフォーマンスレベルの低下した筋肉に負荷をかけているので急にやり始めると何処かを痛めてしまうケースも少なくありません。大切なのは今自分の身体が一体どんな状態かなのかを「感じる力」です。整体というのは何も整体院や治療院などで施術を受けることだけではありません。自分の身体の声に耳を傾けその時その時で変化していく身体の要求に従って自ら動いていくことです。今日はお肉を食べたい、ちょっと甘いものを口に入れたい、大声で叫びたい、歌いたい等なんでもいいですが身体から起こってくるそうした欲求や要求に添いながら動き、生活していくこと全部が自らを整えることなのだと思います。ふと思い出した気の合う友人に会いに行く、釣りをしに行く、美味しいものを食べる、芸術作品に触れる、普段何気なく行なっているそうした行動が自分の心や体を知らず知らずのうちにチューニングしているのです。
感じる力を取り戻す
自分の身体から立ち上がってくる欲求をしっかりと感じること。それに従って動くこと。
こう書くとそんなことは簡単だし欲求の赴くままに行動することが良いこととは思えないと思われるかも知れませんが自分が何を欲しているのかを感じることは実は意外と難しかったりします。自分の欲求に従って行動してるつもりでも、それがただのストレスからくる反動だったり、惰性だったり、または単に周りの人がそうしてるから、という理由だったりするわけです。それとここでは多くは書きませんが「欲望」と「欲求」も違います。ここで言う欲求とは自分の身体の内側から立ち上がってくる食欲や睡眠欲、性欲などを含めた身体的な要求や意思のようなものです。
そして現代人の多くが自分のそうした内側からの感覚を感じ取りにくくなっています。情報や知識が溢れかえっていることで頭で理解したり考えたりする傾向が強まり、意識も外側や先々のことへと向いてしまい「今、ここにある」自分の身体の生々しい感覚が覆われてしまいがちです。本来はお腹が空いたら食べるという行為も時間だから食べる、といった具合に自分の「お腹が空いた」という感覚とは無関係に食事をされている方も少なくありません。お腹も空いてないのに食べ続ければ過食になりますし消化器も休まる暇がなく不調の元にもなります。それに万人に共通する健康法は存在しないとよく言われます。健康であるためには知識や情報も大事ですがまずは何より自分の感覚を大切に扱うべきだと思います。
シンプルな身体
日の出と共に起きて仕事をして日没と共に休息に入る。
未だ我々の体はこうしたかつての暮らし方に適応していた頃の身体のまま現代を生きており急速な近代化以降の生活環境に対応できないことで様々な歪みが生じ病気や不調へと繋がっているのです。(まさに自律神経の不調などの多くは自然の運行や生理に自分の身体を上手にフローできないことから生じているように思います。)
高度情報化社会に生きながら「日の出と共に〜」といった暮らしを全員がのぞめるわけではないですがそもそもどれだけ文明が発達していても身体の方は未だに石で作った武器を片手にマンモスなどを追っかけてた頃の神経伝達の方法と変わらない身体のまま生きているんだということは知っておいて良いのではないでしょうか。
眠くなったら寝る。お腹が空いたら食べる。休めば自然とやる気も湧いてくる。こうしたシンプルな身体になるためにはまずは自分の身体をしっかり歪みや偏りのないニュートラルな状態へと回復させる必要があります。そのために我々が行うような手技療法は大きく役に立ちます。整体とは身体の感性を回復させる営みでもあります。そして何より人間の身体に元々備わっている自己治癒力などはこの感性があってはじめてドライブするものです。日々の暮らしの中で感じる小さな心の揺れや身体の声を時折でも感じ取りながら過ごしていると次第に自分の身体のことが分かってきます。特別じゃないことの積み重ね。心と体の歩幅を合わせること。美味しくご飯を食べられる。ぐっすり眠れる。やりたい事があって動ける。それが「整体」と呼ばれる状態のような気がします。
「健康とは病気にならないことではなく、異常を異常と感じ取れる力の事だ。」という整体創始者の言葉も置いておきます。
最後までお読み頂いてありがとうございます。
2026年、身体を見直すきっかけにして頂けたら幸いです。
院長 小川 純