春の不調
春は「肝」の季節
東洋医学(中医学)で春は「肝(肝臓)」の季節とされており、自然界の気が上昇し、万物が成長し始める時期と考えられています。肝は循環や代謝、排泄、解毒などをコントロールしており、感情をコントロールする役割もあります。体内の気(エネルギー)や栄養をスムーズに巡らせる働きがあるためストレスや疲労で肝が弱ると様々な不調を引き起こします。
肝の働きが失調すると気が頭にばかり上ってしまい不眠、頭痛、めまい 、イライラなどの症状が現れやすくなります。イライラするというのも、肝は感情では怒りと対応しており、いつもであれば受け流せるようなことや他人の発言などに過敏に反応してしまうのも、もしかしたら肝臓がお疲れなのかも知れません。
肝臓の疲れ=お酒、ではない
当院の施術は腹部の調整や内臓調整も行います。その際に肝臓が疲れていたり負担がかかってる方が多く見受けられます。そうした時に「肝に大分お疲れが溜まっておりますね。」という話をすると、「お酒はほとんど飲まないんですが。」「飲めないんですが。」といった反応を返されることが多々あります。やはり多くの方にとって肝臓=お酒といったイメージが強いのだと思いますが肝臓に負担をかけるものは他にもたくさんあります。
上にも書きましたが肝には代謝や解毒、感情のコントロールなど多岐にわたる働きがあるため普段の生活でお酒を飲まずとも負担がいきやすい臓器なのです。お酒による肝臓への負担はあくまでも数ある負担のうちの一つであり、ストレスはもちろんのこと、添加物の多い食事、薬、サプリメントなどによっても私たちは肝臓にたくさんの仕事を回しているのです。そしてオーバータスクになれば当たり前ですが疲労してきます。多くの働きがあるが故にかかってくる負担の窓口も多くなります。
肝臓疲労の正体
では何故これほど多くの人に肝臓の疲れが目立つのか。
それは現代人が目を使い過ぎてることが大きな原因となっている可能性があります。
とういうのも東洋医学で肝は目と関係が深く職場ではPCと向かい合い、空いた時間ではスマホを触るという多くの現代人の生活スタイルで酷使されがちな目への負担が肝臓の疲れとなってあらわれてきています。(同じように腎は耳、肺は鼻など臓器によって対応する器官があります。)
眼精疲労が強い方や眼の疾患をお持ちの方などは肝臓に対応する経穴(ツボ)に強い反応が出ており、身体の背面のちょうど肝臓の裏あたり、右中胸背部がこんもり硬くなってるケースが多く、我々はそうした観察点を頼りにして施術を組み立ててまいります。
また目の疲れは頭部全般に波及していくため先ほど挙げた頭痛、不眠、めまい等の症状に対しても肝臓調整は非常に有効となってきます。
花粉症
春といえば止まらない鼻水や咳、喉の不快感といった花粉症の症状でお悩みの方も多くいらっしゃいます。花粉症ではない人の方が少ないんじゃないかと思うほどで「国民病」と言われるのも納得できます。近年では花粉症と腸内環境の関連が指摘されるようになってきており日々体の中に入れる食べ物を見直したりすることで症状が軽くなったり治る方もいらっしゃるようです。
春は排泄機能が高まる季節で冬の間に溜め込んだ毒素や老廃物をデットクスしていく時期でもあります。先ほど肝臓は循環や代謝、排泄や解毒の臓器と書きましたが花粉症などのアレルルギー症状も身体に溜め込んだ毒素や老廃物のある種の排泄症状だと考えてみると普段からの食事や間食を見直す良いきっかけになるかも知れません。
また整体の世界では1月や2月のうちから水をしっかり摂るようにすることで排泄の時期である春を気持ちよく過ごせるようにするという養生法があります。水と書きましたが文字通り水でお茶やコーヒーなど色のついたものはこの場合カウントされません。むしろ利尿作用があるため水分補給としての意味では色のついていない水を摂ることをお勧めします。この時も一度にグビグビ飲むというよりかは合間合間に口の中を湿らせる程度のつもりで少しずつをちょこちょこと摂ってあげるとしっかり体に水分として吸収されていくそうです。春になる少し前から水分をしっかり摂ることで一度体の中をリセットするようなイメージで是非試して見て下さい。
のぼせ(頭の熱)をとると症状が軽くなる
花粉症やアレルギー症状でお悩みの方で鼻水が止まらない方のお身体をみていると頭にだけ熱がこもってしまっていて「のぼせ」の状態になってるケースがよくあります。のぼせる、というと長湯などをした時などになるイメージかもしれませんが、目を酷使し続けたり姿勢不良によって首の付け根などが固まった方などは上手く頭の熱が下に逃がせずにのぼせた状態になっていることが多々あります。そしてもともとあるアレルギー症状とこうしたのぼせの状態が重なることで鼻水がとめどもなく流れるという事態を引き起こしてる方もいらっしゃいます。夜寝る時に鼻水が止まらないという方はお家にある保冷剤などにタオルを巻いて前頭部に当てておいてやるとスッキリして眠りやすくなる場合があるので是非お試しください。(中には頭が冷えすぎて頭痛になった方もいらっしゃるので不快に感じたり症状が和らがない場合は速やかに中止してください。)
春を心地よく過ごすために
春は寒暖差などもあり自律神経の働きが不安定になりがちです。また寒さに耐えるために縮まって交感神経優位だった冬から、骨盤が徐々に開き副交感神経優位にふれてくるため「やる気が出ない」「いつもならなんでもないことが面倒くさい」といったモードになりやすい季節でもあります。それなのにも関わらず新年度や新生活の始まりで「気を張る」ことが多い時期でもあるため心身ともにかかる負担が通常よりも大きく感じられます。それでもなんとか4月を乗り切ったところで5月の大型連休(GW)がやってきます。今まで耐え忍んだり、抑え込んできた不調がこのGWあたりで表面化するのがいわゆる五月病の正体というわけです。
新たな環境で気を張ることは仕方ないことですし社会生活上必要なことでもあります。とはいえ身体の事情からすれば大変な負荷がかかってるわけですのでそういった身体の声を大切にしつつ、目標数値なども普段よりやや低めに設定しておいたり、暴飲暴食を避け早めに就寝したりリラックスモードに入るなど、細やかな微調整を自分の身体に対してしてあげることが気持ちよく春を過ごすコツでもあります。
身体に余白と流れを。
お身体のことで何かございましたらぜひ当院へお越しください。お待ちしております。
院長 小川 純